大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和55年(特わ)1579号 判決 1980年10月23日

本店所在地

東京都渋谷区<以下省略>

株式会社Y1

(右代表者代表取締役 A)

本籍

岡山県岡山市<以下省略>

住居

埼玉県浦和市<以下省略>

会社員

Y2

大正七年○月○日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官東隆司出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社Y1を罰金一、二〇〇万円に

被告人Y2を懲役一年に

それぞれ処する。

被告人Y2に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社Y1(以下「被告会社」という。)は、東京都渋谷区<以下省略>に本店を置き、産業調査、開発に関する雑誌の発行等を目的とする資本金五〇万円の株式会社であり、被告人Y2は、被告会社の実質経営者として同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人Y2は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、賛助金収入の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿したうえ、

第一  昭和五一年六月一日から同五二年五月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が四、四五九万六、〇三四円(別紙(一)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五二年七月二七日、東京都渋谷区<以下省略>所在の所轄渋谷税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が五二万三〇一八円でこれに対する法人税額が一四万六四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和五五年押第一五〇九の一)を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額一、六九九万八、四〇〇円(別紙(四)税額計算書参照)と右申告税額との差額一、六八五万二、〇〇〇円を免れ

第二  昭和五二年六月一日から同五三年五月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が三、五一八万二、三七七円(別紙(二)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五三年七月二五日、前記渋谷税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一三一万八、九四〇円でこれに対する法人税額が三六万九、〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(前同号の二)を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額一、三二三万二、八〇〇円(別紙(四)税額計算書参照)と右申告税額との差額一、二八六万三、八〇〇円を免れ、

第三  昭和五三年六月一日から同五四年五年三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が三、〇一五万九、八一四円(別紙(三)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五四年七月二七日、前記渋谷税務署において、同税務署長に対し、その所得金が七〇万二、〇九〇円でこれに対する法人税額が一九万六、五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(前同号の三)を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額一、一二二万三、六〇〇円(別紙(四)税額計算書参照)と右申告税額との差額一、一〇二万七、一〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

一、 被告会社代表者A及び被告人Y2の当公判廷における各供述

一、 被告人Y2の検察官に対する供述調書三通

一、 B、A(三通)及びC(三通)の検察官に対する供述調書

一、 収税官吏作成の売上、セミナーの売上入金、簿外人件費、簿外交際費、交際費の損金不算入額、印刷費、損金不算入税金等、減価償却費、セミナー経費、雑収入及び個人勘定に関する各調査書各一通

一、 検察官作成の事業税に関する捜査報告書

一、 東京法務局渋谷出張所登記官作成の被告会社商業登記簿謄本

一、 押収してある確定申告書三袋(昭和五五年押第一五〇九号の一ないし三)及び総勘定元帳三綴(同号の四ないし六)

(法令の適用)

被告人Y2の判示各所為は、いずれも法人税法一五九条一項に該当するので、所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役一年に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。さらに、被告人Y2の判示各所為は被告会社の業務に関してなされたものであるから、被告会社については、法人税法一六四条一項により判示各罪につき同法一五九条一項の罰金刑に処せられるべきところ、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算した範囲内で被告会社を罰金一、二〇〇万円に処することとする。

(量刑の事情)

本件は、いわゆる総会屋として、大手会社を含めて八〇〇以上の上場会社などから賛助金を受領するなどしていた被告会社が三年間で合計約四、〇〇〇万円の法人税を免れたというものであるが、脱税の動機には何ら酌むべき点はみられず、ほ脱率も一〇〇パーセントに近い高率であって、被告会社及びその業務を統括して実質的経営にあたっていた被告人Y2の刑責は軽視できない。しかしながら、被告会社は、本件に関する本税・重加算税等を納付するとともに、同会社代表者及び被告人Y2は、今後は収支の記帳を正しく行なう旨供述するのみならず、すでにこれを実行しており、反省の情が見受けられることなどの事情も認められ、その他本件にあらわれた一切の事情を考慮して、主文のとおり量刑する。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小瀬保郎 裁判官 久保眞人 裁判官 川口政明)

別紙(一)

修正損益計算書

株式会社Y1

自昭和51年6月1日

至昭和52年5月31日

<省略>

<省略>

別紙(二)

修正損益計算書

株式会社Y1

自昭和52年6月1日

至昭和53年5月31日

<省略>

<省略>

別紙(三)

修正損益計算書

株式会社Y1

自昭和53年6月1日

至昭和54年5月31日

<省略>

<省略>

別紙(四)

税額計算書

<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例